彫刻家 瀬戸 剛 Official WebSite

作家挨拶

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 私の生まれた長野県辰野町は中央アルプスと南アルプスに抱かれた山の中であった。
十六才まで、その二つの山脈の狭間で泥まみれになって百姓をした。
長野県出身のかつての先輩達は異口同音にこんなことを言う。
「あれだけ朝から晩まで山の塊を見ていれば、どうしても彫刻をやりたくなるねー」
・・・私はどうやら山の量塊のような内壁を持った子宮の中で育ったようだ。
 未だにその頃夢見た、理想的な幻の山を人体に捜している。
このところ妙に日本の仏像彫刻や神像に惹かれる。考えてみれば、
五十年近く美術の領域に身を置いてきた私に何らかの形で訴えてきた造形物からは、
すべてといっていい程、仏教や神道の匂いがしていた。
 私が生まれてこのかた、そのような空気に触れ育ってきたということは、
私自身からも、日本の原初的なあるものや、宗教の匂いがにじんでいたのかもしれない。
 今日の空気の渦中にいる自分と、そのようなものとしっかり格闘し、切り結び、
小さなカテゴリーに収まらず、もっとグローバルな視点で「あるもの」を
形象化してみたい。
瀬戸 剛
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